※本記事は新城マガジンから引用しております。
武蔵新城の駅から少し歩いた、住宅街のなか。
小さな公園の横に、静かに佇む一軒のカフェがあります。名前は「Parklet Café(パークレット カフェ)」。
小さなお子さんを連れたお母さん、ひとりで本を読む人、ランチを楽しむグループが、それぞれのペースでゆったりと時間を過ごせる空間。
ここを切り盛りするのが、元保育士で、子育て支援の活動も続けてきた相澤郁美(あいざわ・いくみ)さんです。
保育の現場で感じた違和感や、自身の子育ての孤独さ。
相澤さんの歩みと、「Parklet Café」に込めた想いを聞いてきました。
保育士を目指すまで-「何もできない」と思っていた高校時代
Q. 自己紹介をお願いします

私は相澤郁美といいます。保育士として、また子育て支援者として約20年間、子どもや家庭に寄り添う活動を続けてきました。その活動の中には子育て支援者のための学びコミュニティスクール「みらくRuスクール」を運営を行ったり、誰かの応援者として、ずっと活動を続けていました。
Q. どうして保育士を目指したのですか?
きっかけは、高校3年生のときに進路の先生から言われた「保育士はどう?」のひと言でした。

実はそれまでずっと自己肯定感が低くて、「私って何もできないんだろうな」と思い込んでいたんです。早生まれでのんびりしていて、親からも「ぼーっとしてるね」と言われることが多くて、その言葉をそのまま受け取って、「自分は“できない側”の人間なんだ」と決めつけていました。
そんな中で、先生から保育士という仕事をすすめられた瞬間、幼い頃の自分をふっと思い出しました。4つ下の妹がいて、いつも妹とその友達を4〜5人まとめてお姉さん役で見ていたこと。小さい子が好きで、一緒に遊ぶのもまったく苦じゃなかったこと。
そこに、自分の好きなこと・得意なことを重ねてみたんです。スポーツや音楽、絵を描いたりものを作ったりするのが好きで、何より、人の気持ちに寄り添うことが自分の強みだと感じていて。「保育士になったら、これ全部活かせるかもしれない」と思えました。
「何もできない」と思っていた自分が、初めて「これならやってみたい」と思えた瞬間。それが、保育の専門学校に進学しようと決めたきっかけです。
Q. 実際に専門学校に入ってみて、どうでしたか?
入ってみたら、もう本当に毎日が楽しくて。授業も実習もおもしろくて、ボランティアや勉強会にも自分からどんどん参加するようになっていました。
「何もできない」と思っていた自分が、「学ぶって楽しい」「もっと知りたい」と感じられるようになったのは、このときが初めてでした。
卒業して保育士として働くようになっても、その気持ちは変わらず、子どもたちのために、もっといい保育ができないかと、ずっと考え続けていました。

保育の現場と子育ての孤独から見えた「大人を支える居場所」の必要性
Q. 保育士として働くなかで、どんな課題を感じていましたか?
保育士は素晴らしい仕事なのに、労務の大変さや人手不足で、理想とのギャップに疲れて辞めてしまう人が多いと感じていました。
私自身も忙しさや人間関係に追われ、本当に向き合いたい形で子どもたちと向き合えないもどかしさがあり、保育士が働きやすく理想の保育を実現できる場をつくりたいと考えるようになりました。
同時に、子育て支援のボランティアとして、任意団体を立ち上げて活動していたこともあって、「親の支援も絶対に必要だ」と感じるようになったんです。
子どもが安心して育つには、その周りの大人、保育士や親を支えることが不可欠だな、と思うようになりました。

Q. ご自身の子育てでは、どんな大変さがありましたか?
「保育士だから大丈夫でしょ?」という期待と、「全然大丈夫じゃない」という本音とのギャップです。
保育士として子どもを見るのと、自分の子どもを24時間体制で育てるのとは、本当に別物なんですよね。
産後は体調も不安定で、気持ちも落ち込みやすくて。
眠れない中で、3時間おきのミルク、お風呂、家事…とにかく全部が一度に押し寄せてきて、「こんなに大変って聞いてないよ」と思いました。
そんな子育ての悩みを共有できずひとりぼっちだと感じることも多かったのですが、たまにママ友とお茶をすると「話を聞いてもらうだけで、こんなに楽になるんだ」と実感しました。
ただ、子育て支援センターや親子広場のような場所もありましたが、つながらなきゃいけないプレッシャーみたいなものも感じていて、当時はあまり行けなかったんです。
だからこそ、「つながってもいいし、つながらなくてもいい。とにかく、がんばらなくていい場所」があったらいいなと思いが、今のParklet Caféの原点になっています。
公園のようにふらっと寄れる「Parklet Café」に込めた想い
Q. 「Parklet Café」という名前には、どんな想いが込められていますか?

きっかけはすごくシンプルで、この物件を初めて見に来たとき、すぐ隣に小さな公園があったことなんです。
公園とつながるスタンドカフェみたいに、外にベンチを置いて、コーヒーを飲みながら、公園を眺められたらいいなって。
そして、「公園のように、ふらっと寄って、ほっとできる場所」というコンセプトが思い浮かびました。
ママ友を作らなきゃいけない場所でもなく、無理に誰かとつながらなくていい。
公園のベンチに座るみたいに、「ちょっと一息つこうかな」と入ってこられる場所。子供がきっかけでたまにママ友と繋がることもある。
そんなイメージを込めて、「Parklet Café(パークレット カフェ)」という名前をつけました。
Q. カフェの空間づくりで、大事にしていることは何ですか?
一番大事にしているのは、「その日の気分で過ごし方を選べること」です。ひとりで静かに過ごしたい日もあれば、人と話したい日もある。
なので店内は、
- 一人で本を読んだりできる場所
- 子どもと一緒にゆっくりできる場所
- 他のお母さんやスタッフとおしゃべりしやすい場所
といった形で、ゆるくエリアを分けています。

このあいだも、たまたま別々に来ていたお母さんたちが「何歳なんですか?」と自然に話し始めていて、そういう、ふとしたつながりが生まれる瞬間を見ると、すごくうれしくなります。無理にママ友を作る場ではなく、通ううちに気づいたら顔見知りができていた、くらいの距離感が理想ですね。
誰かに話を聞いてもらって心が軽くなる時間や、一人でぼーっとして気持ちを整える時間を、このカフェで過ごしてもらえたらいいなと感じています。

Q. 一緒に働くスタッフの方々とは、どのようなかたがいらっしゃいますか?
私のイメージは、アニメ『ワンピース』の船です。
ルフィが「海賊王になる!」と夢をはっきり言うから、そこに共感した仲間が集まりますよね。みんなそれぞれ別の夢を持ちながら、同じ船で進んでいく。
Parklet Caféも同じで、スタッフ一人ひとりにやりたいことがあります。
将来は自分の店を持ちたい、銭湯とコミュニティをつなげたい、子ども向けアート教室を運営している。多様な人たちが一緒に迎えてくれています。
私は自分のビジョンを伝えたうえで、「あなたの夢も一緒に叶えていこうね」と、いつも伝えています。
何の縁もなかった武蔵新城で、つながりが生まれるまで
Q. 武蔵新城という街との出会いは、どんなものだったのでしょう?
実は、もともと武蔵新城にはまったく縁がなかったんです。
駅で降りたこともなかったし、人のつながりもゼロに近い状態でした。
でも、ここでやると決めてからは、本当にスピード感がすごかったです。
地域の方がキーパーソンを紹介してくださって、そこから一気につながりが広がっていきました。
説明会を開いたり、地域の集まりに積極的に顔を出したりすることで、
「川崎区でこういう活動をしてきた人が、新城でカフェを始めるらしいよ」と少しずつ知ってもらえるようになりました。
武蔵新城だから、というより、「人と人のつながりがあれば、街との関係もこんなに早く深まっていくんだ」と実感しているところです。

子どもの成長を喜び合える街へ―Parklet Caféから始まるこれから
Q. Parklet Caféを通して描いているビジョンを教えてください
「子どもの成長を喜び合える社会をつくること」です。
昔の昭和の時代のように、子どもは一人で育てるものではなく、地域全体で育てるものだと思っています。
でも今は、親だけに負担が偏ってしまっている現実がある。
子育てを自分ごととして見てくれる大人が増えたら、子どもも親も生きやすくなると思っています。そのための最初の一歩が、この小さなParklet Caféでつくっていきたいです。
Q. 最後に、これから来るお客様にメッセージをお願いします
ここは、頑張らなくてもいい場所です。普段頑張っている自分に、小さなご褒美をあげに来てください。挨拶だけでも、コーヒー1杯だけでも大丈夫です。
話したくない日はそのままで、話したくなったらいつでも話を聞きます。無理に繋がらなくてよくて、でも必要なときには誰かの気配がそばにあります。公園のベンチにふっと腰かけるみたいに、“ほんのちょっと”気が楽になる。少しでも気持ちが楽になる時間を、ここで一緒に育てていけたらうれしいです。

【お知らせ】クラウドファンディング

《プロジェクトタイトル》
誰かの「一歩」をそっと応援する拠点『Parklet Café』で地域貢献したい!
・目標金額:180万円
・期間:2025年9月29日〜2025年11月30日
・クラファンURLページ
【店舗情報】Parklet Caféについて

【営業時間】
・カフェ営業:11:00〜15:00(L.O 14:00)
・アペロ:11:00〜17:00
【住所】〒213-0014 神奈川県川崎市高津区新作5丁目16-1
【Instagram】@parklet.cafe
【詳しくはこちら】ホームページ
カメラマン:Sugiyama Takanobu
ライター:Sugiyama Takanobu
X:@Sugi _048




